初のポイント獲得を果たした佐藤琢磨。ガッツポーズを繰り返し、ファンの声援に応えた。(Photo by ERIKO SUGITA 写真提供:ロイター)

 2002年のF1シーズンを締め括る最終戦日本GPは、秋晴れとなった鈴鹿サーキットで13日、53周の決勝レースを行なわれた。気温26℃、路面温度は30℃と、この時期の鈴鹿にしては暑いコンディションとなったが、それ以上に日本のファンの前で熱い走りを見せたのが佐藤琢磨だった。

 レースは、今シーズン何度も繰り返されたフェラーリのミハエル・シューマッハ、ルーベンス・バリチェッロによる1-2体制。その後方をマクラーレン・メルセデス、BMWウィリアムズが続く展開。前日、予選自己ベストの7番手からスタートしたジョーダンHondaの佐藤琢磨は、序盤からルノー勢との入賞圏内をかけたバトルを繰り広げた。

 このグランプリで母国凱旋を果たしたトヨタは、前日の公式予選でクラッシュしたアラン・マクニッシュをドクターストップで欠き、エースのミカ・サロ1台体制。一方、Hondaは、決勝スタート前にジャンカルロ・フィジケラのエンジンがブロー。やや不安の残る状況でレースを迎えていた。

 レースは、ポールポジションからスタートしたM.シューマッハが2位のR.バリチェッロ以下を大きく引き離しトップでチェッカー。2位にはR.バリチェッロが入り、今シーズンを席捲したフェラーリが最終戦で1-2フィニッシュを飾った。3位にはマクラーレン・メルセデスのキミ・ライッコネン。

 注目の日本勢は、ジョーダンHondaの佐藤琢磨が3月のF1デビュー以来初となるポイント獲得を果たしたが、同じHonda勢3台はマシントラブルでリタイアとなった。一方、トヨタは、M.サロ1台での参戦となったが8位とシングルフィニッシュを果たした。また、F1参戦100戦目のブリヂストンはM.シューマッハの勝利により、通算70勝目を飾った。

スタート直後からフェラーリの1-2体制に(Photo by HARUYOSHI YAMAZAKI 写真提供:ロイター)
終始トップを走り、通算64度目の優勝を飾ったM.シューマッハ(Photo by TOSHIYUKI AIZAWA 写真提供:ロイター)
初戦に続き、最終戦も3位につけたK.ライッコネン(Photo by HARUYOSHI YAMAGUCHI 写真提供:ロイター)
ホームグランプリで5位入賞を果たした佐藤琢磨(Photo by ERIKO SUGITA 写真提供:ロイター)
5戦連続で1-2フィニッシュを決めたM.シューマッハとR.バリチェッロ(Photo by TOSHIYUKI AIZAWA 写真提供:ロイター)
朝のウォームアップには参加したものの、その後ドクターストップがかかり、決勝を欠場したA.マクニッシュ。決勝出場への意欲を見せていただけに残念な結果となった。 決勝レース序盤、佐藤はルノー勢を抑え7番手を走行。ルノー勢も佐藤を抜きにかかるが、トラブルで戦列を離れる。(Photo by Honda F1プレスオフィス) Hondaの地元鈴鹿で活躍が期待されたBARだったが2台ともリタイアに終わった。(Photo by Honda F1プレスオフィス)
佐藤琢磨が目の前を通過するたびに打ち振られたHondaの応援フラッグ。その数は計り知れないほどだった。(Photo by Honda F1プレスオフィス) A.マクニッシュの欠場によりトヨタは期待を一心に背負うことになったM.サロは、8位完走と期待に応えた。 4台中、3台がトラブルでリタイアする中、ホームグランプリで5位入賞を果たした佐藤。レース後はチームスタッフと記念撮影。



金髪に日の丸の赤をあしらったチームスタッフ達に担がれ、5位入賞、初ポイント獲得を喜ぶジョーダンHondaの佐藤琢磨。(Photo by TOSHIYUKI AIZAWA 写真提供:ロイター)


佐藤琢磨
「ラスト15周の間、ファンが手を振っているのが見えました。コース全体から声援を受けられたのは素晴らしかったです。トラブルが起きないようにすることが非常に重要だったから、早め早めにギアチェンジするようにしてマシンを気遣いました。ピットストップではメカニックが素晴らしい仕事をしてくれましたし、僕もハードにプッシュしました。特に1回目のピットストップの後はハードに攻めました。ルノーを追いかける形になってしまいましたからね。今日はチームのためにポイントを獲得できて本当に嬉しい。昨日は非常に良い結果で、今日は最高の結果です。」

エディ・ジョーダン
「琢磨がここで予選7番手に入り、5位入賞するとは予想していなかったということは認めなくてはいけない。彼は完璧なレースをしたし、私がいろいろな人に対して力説してきた彼の才能というものを見せ付けた。レース中盤はアンダーステアの問題が少しあったようだが、チームは的確な采配をして、エンジニアのジェームス・キーとゲイリー・アンダーソンはピットストップの際フロントウィングをもっと立てるようにした。その後、マシンはよりコンペティティブになり、ペースを上げることができたのが分かったと思う。今シーズン、コンストラクターズチャンピオンシップで中団グループはタフな争いをしており、6位で終えることができ当面の目標を達成できたのは非常に重要だ。素晴らしい仕事をした琢磨のことは本当に嬉しく思う。大観衆が彼を後押しした。今夜はパーティーになるのは間違いない。」

ゲイリー・アンダーソン:エンジニアリング・ディレクター
「鈴鹿での最も印象的なことは、琢磨が全セッションで良い走りを見せたことだ。彼は非常に安定した3日間を過ごした。彼の努力に敬意を表さなくてはいけない。シーズン当初、琢磨はF1でやらなければならないことに慣れるのに苦労していた。ハードに行き過ぎてコースアウトしたり、あまり攻めないでチームメイトに負けてしまったりと振れ幅が大きかった。今日、彼は突然目覚めたのかもしれない。」

中本修平 レース・テストチームマネジャー Honda Racing Development
「佐藤君はハードに攻め、5位入賞と2ポイント獲得という本当に素晴らしいレースを見せてくれましたね。母国の観客を前にしてこの成績は素晴らしいものですし、我々は決して忘れることはないでしょう。今回は、最高のパフォーマンスを求めて、今まで予選でしか使ったことのなかったエンジンを投入しました。この戦略は明らかに両面の結果に現れてしまい、エンジントラブルが原因でレースをフィニッシュ出来なかったジャンカルロとジャックは残念でした。オリビエにとっては、最悪の週末になってしまい、彼にもっといい成績でフィニッシュさせてあげる事が出来なくて、申し訳なく思います。彼の今年の頑張りに心からお礼を言いたいです。」


 自己最高グリッドからポイント獲得を狙い決勝に挑んだ佐藤琢磨。Honda勢が次々とリタイアしていく中、見事5位に入賞し、初ポイントを獲得した。ホームグランプリで最後まで諦めずに頑張った佐藤琢磨におめでとうと言いたい。


「最高だね!1ポイントだけでなく、2ポイント獲得なんて、チームにとっても最高です。チームの皆、なかでもメカニック達には本当に感謝しています。マシンはとても良い感じで、レース戦略、タイヤ、エンジンの全てが今日は上手くいきました。観客の皆さんの大声援も最高でしたね。ラップ毎に手を振ってくれていたのが、ちゃんと見えていましたよ。本当に素晴らしくて、ファンの皆さんには感謝しています。今日は、今までの人生の中でも最高な気持ちです。そして、チームに2ポイントを加えることができ、大変うれしいです。」


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M.シューマッハ:フェラーリ(1位)
「今シーズンを言い表す言葉を見つけるのは難しいけど、結果が全てを物語っているよ。全レースを表彰台でフィニッシュしたということは、チームがやってきた作業の質の高さを示している。彼らが達成したことは信じられないくらいだ。今日のレースは日本のファンにとっても素晴らしいものだったと思う。だって彼らは2人のウィナーを見たんだからね。優勝した僕と、ホームグランプリでF1初のポイントを挙げた佐藤だ。

 今日のレースでは、良いスタートが切れた。そしてリードを広げていたから、良いタイミングでピットに入れるような計画が立てられたよ。この週末ずっと僕らは速かったから、大きなリードには驚かなかった。最高のタイヤを提供してくれたブリヂストンに感謝したい。今回のタイヤで、今日のような気温の高いコンディションの中ロングランをするのは初めてだったけど、ブリヂストンは本当によくやってくれた。彼らのF1参戦100戦目のレースで、70勝目を挙げられたのは本当に嬉しい。

 しかもそれをホームグランプリで決めたんだからね。今回初めてチームに帯同しなかったロス・ブラウンのことにも触れておきたい。早く良くなって欲しいよ!楽しい冬のオフを過ごそうと思っているし、来年さらに強くなって戻って来たいね。でも他のチームも接近してくるから、来シーズンは厳しくなると予想しているよ。新たなチャレンジになるだろう。来年も僕らはタイトル争いをして、レースに勝つだろうけど、今年ほどコンスタントに優勝はできないかもしれない。でもレースに勝てさえすれば、そんなに圧倒的な強さを見せ付ける必要はないよ。来週ミサノで開かれるフェラーリのイベントは盛大なお祝いになるだろうけど、まずとにかく今夜はパーティーだね!」

R.バリチェッロ:フェラーリ(2位)
「僕にとっても、フェラーリにとっても幸せな結果だ。このような素晴らしいマシンに乗って、フェラーリ・ファミリーの一員になれたのは素晴らしいことだよ。僕らがより緊密な関係で今シーズン一緒に作業してきたブリヂストンに感謝しなければならない。彼らと一緒に素晴らしいシーズンを過ごせたし、辛い作業も全て報われたよ。来年はさらに強力になるだろうね。

 スタートではちょっとミハエルに遅れをとって、最初の数ラップはかなりマシンがボトミングしていたんだ。だからスピンしてタイヤを傷めないように気を付けたよ。1回目のピットストップの後、マシンバランスに完全に満足していたわけではなかった。でも今日のレースでは問題はそれだけだったから、何とかうまく走り切れたよ。レースのセットアップという点では若干問題があったかもしれない。でも後ろのドライバーとのギャップがあったから、とにかく自分のレースに集中して、ペースを守っていたよ。いずれにせよ、ラスト3戦で2勝できたから大満足だ」

K.ライッコネン:マクラーレン・メルセデス(3位)
「ラルフ・シューマッハにスタートでかわされて、その結果、5番手から走ることになったんだ。レース終盤でスロットル・コントロール・システムに異常が発生するまではいい走りをしていたよ。運良くその問題も解決したしね。最後にはラルフがリタイアしたから表彰台に上ることが出来た。マクラーレン・メルセデスのドライバーとして走った最初のシーズンで、オーストラリアで3位、そして最後のレースでも3位になれた。今シーズンは楽しめたし、既に気持ちはテストに向かっているよ」


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今シーズンは僅か1勝に終わったR.シューマッハ
(Photo by TOSHIYUKI AIZAWA 写真提供:ロイター)
 シューマッハ兄弟によるバトルも今は昔。ここ鈴鹿でもフェラーリのライバルになりえず、R.シューマッハはリタイアに終わった。


D.クルサード、僅か7周でリタイアに終わる
 ここ数戦、ミシュランタイヤとのマッチングが良く戦闘力アップのマクラーレン。しかし、鈴鹿ではフェラーリのライバルになることもなく、デビッド・クルサードは僅か7周で戦列を離れた。




日本GP 決勝順位
順位 No. ドライバー チーム タイヤ タイム 周回数 平均速度(km/h) 最高速度(km/h)
1 1 M.シューマッハ フェラーリ B 1'26:59.698 53 212.644 294.1
2 2 R.バリチェッロ フェラーリ B 1'27:00.205 53 212.624 286.1
3 4 K.ライッコネン マクラーレン・メルセデス M 1'27:22.990 53 211.700 284.1
4 6 J-P.モントーヤ BMWウィリアムズ M 1'27:35.973 53 211.177 285.1
5 10 佐藤琢磨 ジョーダンHonda B 1'28:22.392 53 209.328 285.5
6 15 J.バトン ルノー M 1'27:00.657 52 208.591 276.6
7 7 N.ハイドフェルト ザウバー・ペトロナス B 1'27:02.825 52 208.505 276.4
8 24 M.サロ トヨタ M 1'27:13.722 52 208.070 277.2
9 16 E.アーバイン ジャガー M 1'27:33.269 52 207.296 270.8
10 23 M.ウェーバー ミナルディ・アジアテック M 1'27:21.578 51 203.761 266.4
11 5 R.シューマッハ BMWウィリアムズ M DNF 48 212.015 288.0
90%=48周
- 17 P.デ・ラ・ロサ ジャガー M DNF 39 206.238 270.8
- 9 G.フィジケラ ジョーダンHonda B DNF 37 207.340 282.2
- 14 J.トゥルーリ ルノー M DNF 32 209.471 275.3
- 11 J.ビルヌーブ BAR Honda B DNF 27 207.641 286.5
- 22 A.ユーン ミナルディ・アジアテック M DNF 14 202.035 262.4
- 12 O.パニス BAR Honda B DNF 8 123.825 255.5
- 3 D.クルサード マクラーレン・メルセデス M DNF 7 200.453 273.7
- 8 F.マッサ ザウバー・ペトロナス B DNF 3 200.031 267.5


driver's points constructor's points
 ドライバーズ:日本GP終了後
  ドライバー チーム ポイント
1 M.シューマッハ フェラーリ 144
2 R.バリチェッロ フェラーリ 77
3 J-P.モントーヤ BMWウィリアムズ 50
4 R.シューマッハ BMWウィリアムズ 42
5 D.クルサード マクラーレン・メルセデス 41
6 K.ライッコネン マクラーレン・メルセデス 24
 コンストラクターズ:日本GP終了後
  チーム
ポイント
1 フェラーリ 221
2 BMWウィリアムズ 92
3 マクラーレン・メルセデス 65
4 ルノー 23
5 ザウバー・ペトロナス 11
6 ジョーダンHonda 9


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